今日のお題は、3月の節句『ひな祭り』です。
女の子のお祭りという事で、個人的に縁のないイベントですが、ひな人形などは日本を代表する芸術とも言える文化と言えます。今回はそんなひな祭りについてレポートしていきます。
ひな祭りとは?
ひな祭りは24節句の一つで『桃の節句』と言いますが、ルーツは中国の『上巳の節句』が日本伝わったのが始まりとされています。
中国の上巳の節句は、今の日本でも一部地域に伝わる『流し雛』というのが主流でした。編まれたわらの中に紙などで作った『祓い人形』を入れて流す事で、人形に自分の邪気を遷して流す事が出来るとされていたんです。
流し雛は一部地域では今でも行われていますが、現在のひな祭りの人形と言えば飾る方のひな人形が主流。これが定着したのは江戸時代に入ってからだと言われています。
流すものから飾る方へ、紙から今の立派な人形へと変わるにつれてひな人形も今のように豪華なものへと変化していきます。
因みに桃の節句と言う位なので、昔は桃の花にちなんだ行事でした。桃の花には魔除けの力があるとされていたので、桃の花のお酒や桃の葉のお風呂などで厄払いを行っていたそうです。
桃の魔除けの力は桃太郎にも由来するものだとも言われています。魔というか鬼ですが、人を苦しめる鬼を倒す破邪の力を持っていたので桃太郎なんだとか☆
ひな祭りって何をする日?
ひな人形
ひな人形って何段?
今ではすっかり定着したひな祭りとひな人形。毎年出すのが面倒だとぼやいていたのをよく覚えています。だったら出さなきゃいいのにでも確かにひな人形って大きいですよね、サイズじゃなく段数というんでしょうか。
僕の実家は貧乏やったんですが、それでも3段ありました。3段くらい頑張れよ出した分だけ直すのも大変なひな人形たちは、何段と言うのが正式仕様なんでしょうか。
正解は7段です。
今回掲載しているひな壇は『アグリパーク竜王』という滋賀の道の駅に飾られていたものです。やはり正式揃いのものは圧巻です。
ひな人形の7段にはそれぞれ置き方・順番が決まっています。
1段目:お殿様とお雛様
ひな祭りの歌で~お内裏様とお雛様~と言う一節がありますが、お殿様とお雛様という説と、やっぱりお内裏様とお雛様と言う説、両方見受けます。
正解はお殿様が正しいようです。
お内裏というのは天皇陛下のおわす場所・宮殿を指します。御所とか禁裏と言うのは聞いた事があるはず、あれとほぼ同じ意味です。なのでお内裏様だと宮殿様という日本語としておかしい話になってしまうんだとか。
一方で、このお殿様・お雛様は天皇・皇后両陛下を模して作られた人形なので一対で『内裏雛(だいりびな)』と言うのは正しい呼び方だそうです。
簡潔にお願いします☆
- お内裏様と言う表現は間違い
- お殿様とお雛様と呼ぶのが正しい
- お殿様とお雛様の二者一対の人形を指して内裏雛と呼ぶ
こんな感じです、明日早速家族・同僚に自慢してみましょう。
2段目:三人官女
ここは三人官女と言う三体の女性の人形が並ぶポジションです。官女というのは女官、つまり宮仕えする女性を指します。
昔、皇后さまの周りは男子禁制、うらやまそんな中でもお世話をする人が必要ですが、無役の人にそんな大事な役目を任せる事は出来ません。と言う事で出来た役職が始まりとされています。
ひな壇の並びを見ても皇后のお傍にいる役というのが如実に表れていますね☆
この三人、それぞれに持ち物が決まっています。向かって右から『長柄の銚子』、『三方』、『銚子』。銚子と言うのはいずれも宴席でお酒を注ぐのに使用されていた道具です。因みに持つものによって官女の位に上下があるそうで、三方>長柄の銚子>銚子の順なんだとか。女性社会って恐ろしい細かい所にもしっかりと決まりがあるものなんです。
3段目:五人囃子
三段目はひな祭りの歌にも出てくる笛や太鼓を携えた『五人囃子』です。
お囃子とは祭り囃子など今でも残る音楽ジャンルの一つです。お囃子の中で多分断トツで有名なのが『コンチキチン』で馴染みの『祇園囃子』でしょう。
向かって右から扇を持つ謡い手、笛、小鼓、大皮鼓、太鼓の順に並びます。今のボーカル一辺倒のバンドと違いこの頃は楽器メイン、と言うか優雅にお酒を飲み雰囲気を楽しむのがメインです。謡い手さんも楽器もその優雅さをぶち壊さないようにあくまで厳かに奏でられるものだったようです。
4段目:随身・左近の桜・右近の橘
四段目はあんまり馴染みがないかもしれません、随身と呼ぶ側近の武官です。
向かって右が左大臣=年配者、左が右大臣で若者を立てるんだとか。また、この段には正面向かって
- 右に『左近の桜』
- 左に『右近の橘』
があります。これはお殿様からの見え方なので、何だかおかしなことになっています。
京都市内の西側に右京区、東に左京区があるのは御所正門(南側)から見てのお話なので、これと同じ理屈です。紛らわしい昔から京都は御所が中心の街なんです。
5段目:仕丁
五段目に来るのは仕丁、つまり護衛兼従者(世話係)のポジション。
護衛と言っても持っているものは、右から立て傘、お殿様の靴を置く沓代(くつだい)、台傘。台傘というのは平たく言うと傘立てです。なぜ傘立てを持ち歩く必要があるのかいまいちわからないので、あまり突っ込まないように。
関西風では右から竹箒、塵取、熊手を飾るという、護衛感が更になくなった感じになります。
6・7段目:嫁入り道具、輿入れ道具
6,7段目に置くのは嫁入り道具です、なのでこのひな壇と言うのはやっぱり結婚式の様子を指していることがわかります。
6段目に嫁入り道具、7段目に輿入れ道具を置くのが一般的とされています。
- 6段目:箪笥、挟箱、長持、鏡台、針箱、衣裳袋、火鉢、茶道具
- 7段目:籠、重箱、御所車
ひな祭りグルメ(行事食)
華やかなひな祭りを華やか足りえるかどうかはやっぱりひな祭りグルメの出来次第といえます。
ひなあられ
ひなまつりの定番お菓子といえばひなあられでしょう。
あられなので、よくよく考えるとそんなにおいしくないお菓子が多様化する昨今、ケーキなどがもてはやされているものの、定番のお菓子としてはやっぱりこちらです。
ちょいちょい毒を吐くな今日☆
現在のひなあられは色んな色や味があって見た目にも鮮やかですが、本来のひなあられは桃、緑、黄色、白の4色とされていて、春夏秋冬を表しています。
一年間、娘が健やかに幸せに暮らせるようにという願いが込められています。
また、3色の場合もありますが
- 白:雪
- 緑:木とか草
- 赤:血(命)
をそれぞれ意味し、自然の恩恵を受けられるようにという願いが込められています。
いずれにせよ、我が子の健やかな成長を願う親の気持ちが表れたお菓子といえます。
ちらし寿司
ひなあられと共に欠かせないのがちらし寿司です。
ちらし寿司に定義は無いらしく、具を酢飯の上に散らしたお寿司なので『ちらし寿司』と言うだけで、具の決まりとかはありません。なので、作り手が様々に彩り鮮やかなちらし寿司を作る事が出来るのが特徴です。
さて、この今では定番となったひな祭りのちらし寿司ですが、特に食べられるようになった由来などはない様です。ただ、ずっと昔から桃の節句=寿司と言うのは定番であり続けていたんですが、昔の寿司の主流はなれ寿司でした。
写真はふな寿司ですが、漬ける季節が違うだけで基本的に同じものです。
食べた事のない方は是非一度チャレンジしてみて下さい。僕は数ある食材の中、ブロッコリー以外のものは納豆でもへしこでもくさやでも食べれないものはないと思っていますが、このなれ寿司だけは未だチャレンジする勇気すら沸きません。
これがひな祭りの定番グルメだったというんですから、祝われる子供にとっては、トラウマにしかならない事でしょう。
はっきりとした由来は無いものの、なれ寿司がちらし寿司に変わっていったのはある種必然に感じられます。
ハマグリのお吸い物
ちらし寿司ってぱさぱさするのであると嬉しい『蛤のお吸い物』。ここら辺まで来ると作る家は作るけど出てこない家も多いかもしれません。うちの実家では普通に味噌汁でした。
蛤というかあさりとかしじみとか貝類は皆お吸い物に入れると美味しいですよね、でも美味しいからとか口がパッサパサになるからとりあえず汁ものが欲しいとかそんな理由じゃなく、むしろ蛤が選ばれているのにはちらし寿司よりちゃんとした理由があるんです。
蛤は二枚貝で、対となる貝はぴたりと合わさるけどそれ以外の貝2枚がぴたりと合わさる事はないので、平安時代には貝殻に絵を描いた貝のペアを探す『貝合わせ』と言う遊びがあったほど。
それだけに蛤は一人の相手と末永く一緒に居られるという事で縁起の良い貝として扱われてきました。その為、蛤は女の子の成長を祝うひな祭りの定番食材として定着していったという訳です。
白酒
白酒というと甘酒を思い浮かべるかもしれませんが、全くの別物。アルコール度数9%、正真正銘のお酒です。平安時代の時代劇なんかで貴族が飲んでいる白いやつありますよね、あれです。
勿論ですが子供は飲めません、子供のお祭りにかこつけて自分も楽しもうという魂胆がありありと見える大人のお楽しみのものです。
白酒を飲む習慣には諸説ありますが、大蛇をそのお腹に宿してしまった女性が三日三晩白酒を飲み続けたところ、子が流れてくれた事から女性の厄払いの為に白酒を飲むようになったというのがその始まりの様です。
蛇とお酒と言えば、八岐大蛇のお話とも符合します。白酒自体がこの伝説と関連する事は無いかもしれませんが、昔からお酒は魔除け・厄除けの材料として扱われていたのは確かなようです☆
これを商機ととらえたお店が桃の節句には白酒と言うフレーズを広めたところ大人気となり、文化として定着したという訳です。どの時代でもイ〇ンみたいな商魂たくましい商売人がいたという事なんでしょう。
白酒は大人も一緒に楽しみたいという事の他、ひな祭りが女の子だけでなく女性の為の節句で、元々は女性の厄払いの行事だった事を今に残す一つの証左と言えるのかもしれません。
まとめ
長くなりましたが今回はこれで以上です。
女の子がいる家庭では普通に営まれてきたし、これからも営まれ続けていくだろうひな祭りですが、一つ一つに意味が込められています。
せっかくの愛娘さんなので、その子が一年ごとに成長を目いっぱいお祝いしてあげて下さい。